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写真=斎木三佳子

写真=斎木三佳子

「“母の力”が未来をつくる」―セヴァンと考える、世界を変えるくらし方(後編)

  • 環境と平和

「伝説のスピーチ」で知られるカナダの環境活動家・セヴァン・スズキさんが、来日ツアー「Love is the Movement!」の最終日に、パルシステムにやってきました。前編では、セヴァンから母親たちへの力強いメッセージが語られました。後編では、会場の参加者から寄せられた質問と、セヴァンの答えをご紹介します。

セヴァンから、ちょっと迷っているあなたへ

Q1 自分の日々のくらしや経済活動そのものが環境を悪化させていると考えるといたたまれなくなる。セヴァンさんは、自分のくらしと生き方との矛盾をどう乗り越えていますか?

A1 自分がそのシステムの一部であっても、「おかしいと思うことはおかしい」と言う権利を私たちはもっています。

 私は、ふだんは人口約900人の島にくらしていますが、できるだけ地球に負荷のないくらしをしたいと願っています。
今回のツアーでは、飛行機にも乗ってたくさんCO2を排出してしまいましたから、そのぶんくらいは社会の役に立てたらいいなと考えます。でも、それを証明することはできないし、もしかしたら、見合うだけのことはできないかもしれない。
たしかに私たちは矛盾のなかを生きています。社会システムそのものはますます破壊的になっていて、私たちはそのシステムのなかでしか生きていけないようになっているのです。

 でも、システムに関わっている者は語る資格がない、なんていうことはありません。自分がそのなかにいても、システムについて自分の思いを語ることはできます。それが民主主義です。おかしいと思えばおかしいと言い、変えることができれば変えていく。諦めてしまってはいけないと思います。

Q2 「伝説のスピーチ」から22年経って、セヴァンさん自身に変化はありましたか?

A2 以前は子どもの代表のつもりで自分たちのために声を上げた。今は、子どもたちのために戦っているつもりです。

 スピーチをしたときは、私は両親の子どもでしたが、今は私自身が親となり、自分の子どもを育てています。もちろん、生活は全然違います。ものの見方も複雑になったり多層的になったりしている。

 でも、視点と立場は違っても、根本的な価値観は変わっていないと思います。以前は子どもの代表のつもりで自分たちのために声を上げた。今は、子どもたちのために戦っているつもりです。

 人生のどの段階にいるかによって見方や視点は変わりますが、真ん中を貫くのは、自分が本当に守るべきもの、一番大切なもの。それはずっといっしょです。

 誰にとっても本当に守るべきものとは「よりよき未来」ではないでしょうか。職業も年齢も関係なく、未来というのはすべての人の問題であって、これ以上に大切なものはありません。すばらしい未来のために自分が生きるということは、私たちすべての神聖な責任だと思います。持続可能性がどうして大事かといえば、まさに私たちは未来にかけているからです。

Q3 私は小学校4年生です。環境によいこと、と思ってごみ拾いをしていますが、ほかにもやったほうがいいことがありますか?

A3 小さな行動でも、自分がやって気持ちいいな、とかうれしいな、と思えることをたくさん積み重ねしましょう。ひとりでできることは小さくても、みんなでやればすごいでしょ?

 すばらしいですね。私も先日家族と海岸で遊んでいた時、新しいルールを作りました。海岸に出たら、最低ひとつはごみを拾って帰ることって。ひとつでいいんです。でも、海岸に行く人みんながやったら違うでしょ?

 箸を持ち歩いたり、ペットボトルは買わないと決めていたり、私は小さなことをたくさんしています。家ではガーデニングでにんにくを育てている。私が食べるもの全体からすれば微々たるものですが、自分の食べているものの一部を自分の手で育てていると考えるだけで幸せな気持ちになります。ごみひとつ拾うことで自分がうれしいなと思えることが大事です。

Q4 「母」の力の偉大さを実感しています。男性は何をすればよいですか?

A4 すべてを含み込むエネルギーが「母性」。男性のなかにも「母性」の資質はあります。

 どこの運動でも、もちろん男性も大活躍しています。「母」という言葉は「いのちを与える力」を表現する象徴的な言葉で、そうした母親的な資質は男性もみんな備えているのです。この母の資質が、私たちの運動にとっての力強いアイデンティティになっているのです。

 人々を除外するのではなく、すべての人を含み込むエネルギーであり、「父」をも含み込むのが「母」です。

Q5 世の中を見渡せば暗いことばかり。セヴァンさんはなぜ「希望」を持ち続けられるのですか?

A5 どんな苦難に直面しても、人類は必ず乗り越え得ることを歴史が証明しています。希望とビジョンがあれば、必ず可能性は拓ける。私はそう信じています。

 私はよく、「あなたはまだ希望をもっているのですか?」と尋ねられることがあります。権力の格差、富の格差、権力者たちの無力さ…私たちは、非常に暗い時代を生きているのかもしれません。

 でも、いまだに私は、まったく楽観的なのです。必ず最後はうまくいくと思えてしまう。

 母のおかげかもしれません。じつは子どものころ、暗い気持ちになったこともあるのですが、母がこう言ってくれました。「人類は本当に大変な苦難の時代を何度も通り抜けてきたのよ」って。

 たしかに、第2次世界大戦も、冷戦時も、人々は変化を作り出す力で何とか切り抜けてきた。私は常に、危機を乗り越えたリーダーを探してモデルにしています。南アフリカのネルソン・マンデラだって何十年も収監されて、なぜ絶望しなかったのでしょうか。後に大統領になるなんて想像していたのでしょうか。

 今日不可能と思えることが、明日には可能と思えるかもしれない。この可能性を私たちは忘れてはいけないと思います。これは単なる言葉のあやではなく、歴史上繰り返し起こっていることです。こんな風に生きたい。社会はこうあってほしい。希望とビジョンがあれば、あとは腕まくりしてそちらに向かって行動するのみ。私はなぜかそう思えました。だからみなさんも、きっとそう思えるはずです。

取材協力/ナマケモノ倶楽部 通訳/辻信一 取材・文/高山ゆみこ 撮影/斎木三佳子 構成/編集部