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写真=編集部(左)、林鷹央(右)

写真=編集部(左)、林鷹央(右)

夏休みに子どもと探そう!田んぼで、公園で感じる「生物多様性」

  • 環境と平和

春夏秋冬と移り変わる豊かな四季があり、全国に山・川・海・湖などが広がる日本は、世界でも有数の多様な自然環境に恵まれた国です。私たちのくらしは、そうした自然=さまざまな動植物の営みに支えられ、育まれてきました。ただ、毎日の生活のなかで"人も自然の一部"であると感じることは、なかなかむずかしいものです。この夏、みなさんも親子で「生きもの探し」をしながら、"いのちのつながり"を感じてみませんか?

『コア・フード米』の田んぼで、希少なオサムシを発見!

 2014年6月22日、パルシステム茨城とJAつくば市谷田部の交流事業「田んぼの学校」が行われました。全4回の2回目となるこの日は、田んぼの草とりと生きもの調査です。あいにくの天気にもかかわらず、組合員27家族、約76名が参加。受付をすませるやいなや、参加者の親子は、カッパに身を包み、傘を片手に、草とりをしながら生きもの探しを始めます。

 「見て見て、何かいるよ!」「つかまえた、つかまえた、つかまえた!」田んぼのあちこちで、子どもたちの歓声が上がります。降りしきる雨など気にせず、20cmほどに生長した稲の合間や雑草を刈り取ったばかりの田んぼのあぜで、夢中になって生きものを探す子どもたち。最初はおそるおそる田んぼに足を入れていた小さな子も、ぬるりとした泥の感触に慣れるにしたがい、大人の手を離れ、ひとりで田んぼのなかを歩き回っていました。

大人も子どもも、雨など気にもせずに生きもの探しに夢中に

 この日、生きもの調査を行ったのは、環境保全や資源循環に配慮したパルシステムのトップブランド「コア・フード」の米を栽培する田んぼ。たったの1時間で、アマガエルやオタマジャクシ、ゲンゴロウの仲間、ヤゴ、コガムシなど、20種の動物が見つかりました。

 「今日一番驚いたのは、近年大変数が減っている日本固有のオサムシの一種、マイマイカブリが見つかったことです。マイマイカブリは、カタツムリをエサとする飛べない虫。あぜや農道が舗装されてしまうと、車にひかれたり、湿り気のある地面を好むカタツムリも減ったりして安全に生きられません。つまりマイマイカブリがいるということは、土のあるあぜや農道があり、除草剤を使わないことで草が茂って湿気も保たれるなど、豊かな自然が育まれている証です」と話すのは、生きもの調査の講師で自然再生・保全活動家の林鷹央(はやし・たかお)さんです。

田んぼのあぜで見つけたマイマイカブリは、近年見られなくなっている

 田んぼは、草とりや稲刈りといった農作業で人の手が入ることで維持され、たくさんの生きものが生きる環境を作ってきました。ところが、農薬や除草剤を使って害虫や雑草を一網打尽にすると、たとえば水田の害虫を食べてくれるクモ、イトトンボのヤゴ、田んぼを象徴するタガメやゲンゴロウなども死に絶えてしまいます。「永きにわたる人間と生きものの関係が、近代の農法によって失われつつあります。生きものがすみやすい環境が守られている田んぼは、生きものとつながりを再確認できる場所なのです」(林さん)

毎年1000~1万種が絶滅している!?

 2013年4月現在、環境省が絶滅種に指定する日本の生物は113種、絶滅危惧種は3597種にものぼります。その約50%が、田んぼや川、里山に生息していた生きものだと林さんは言います。

 「レッドリストが更新されるたびに絶滅危惧種が増えているのは、人間が自然の一部であることをかえりみることなく、各地で都市化や工業化を推進し、農業の効率化を図った結果だといえるでしょう。ただ、今日マイマイカブリが発見されたように、まだ手遅れではないのです。せめて農業のあり方を見直せば、間違いなく回復する種がたくさんいると思います」

「田んぼは2000年続いてきた人と自然の営み。近代農法が農業のあり方を急に変えてしまったために、生きものたちはついて来れない」と話す林鷹央さん

 世界に目を転じれば、20世紀以降の100年間で自然環境は急激に変化し、温暖化や大気汚染、海洋汚染といった環境破壊、資源の過剰利用などにより、年間で1000~1万種の生物が絶滅していると、WWF(世界自然保護基金)は伝えています。その危機的な状況を受け、国連環境開発会議(地球サミット)は2011年から2020年までの10年間を「国連生物多様性の10年」に定め、現在世界中が環境保全に取り組んでいます。

 日本でも、2008年に生物多様性基本法が成立。生物多様性を保全し、自然と共生する社会を実現するべく2012年に策定された「生物多様性国家戦略」では、具体的な取り組みや数値目標が掲げられています。それに基づき国や自治体、企業、研究団体などによりさまざまな取り組みが進んでいますが、「私たちの毎日のくらしは、生物多様性によって支えられている」ことへの理解は、まだまだ広まったとはいえない状況です。「環境への意識が高いヨーロッパでは、食べ物ひとつにしても、価格が安い・高いではなく、どこでどのように作られたのかを購買の指標にする人が多い。そういった視点でのモノ選びが、もっともっと日本にも定着してほしいと思います。私たち一人ひとりの選択こそが、農業・漁業といった食料生産のあり方を変え、自然環境や生物多様性を大きく左右するのです」(林さん)

日々のくらしにつながっている「生物多様性」

 「生物多様性」が大事とはわかっていても、子どもたちに伝えるのはむずかしいものです。しかし、「このおにぎりのお米は、誰が、どこで、どうやって作られたの?」。子どもといっしょに、そんな思いをめぐらせるだけでも、生物多様性はグッと身近になります。「食べ物は、工場で作られているのではありません。生産者の方々が自然の力を守り、育み、私たちに届けてくれているのです。そこには、たくさんの生きものたちの姿、生物多様性があります」と林さん。

初めて見る生きものたちに夢中な子どもたち

 環境保全型農業の推進に力を入れてきたパルシステムでは、化学合成農薬や化学肥料を使わない「コア・フード」、パルシステムが独自に定めた農薬削減プログラムを実践する「エコ・チャレンジ」といった取り組みを展開。組合員とともに生物多様性を確認しようと、10年以上前から田んぼの生きもの観察会を開催してきました。

 今回「田んぼの学校」の会場となった田んぼでは、雨空でもツバメが飛び交い、農耕地に巣をつくるホオジロの姿も見られました。畦道には春の七草のセリ、漢方にも使われるハコベ、昔から葛粉として使われてきたクズなどが、外来種に負けじと葉を広げていました。「日本には、"自然とともにある"ことを受け入れてきた歴史があります。歌に詠み、食に取り入れ、自然の恵みに感謝する行事を行ってきました。自然を支配しようと科学技術が発達した西洋とは対極にあるのです。受け継がれてきた文化や感覚を、少しでも子どもたちに伝えるのは、大人である私たちの責任ではないでしょうか」

田んぼの近くの草地で巣を作っていたホオジロ

子どもと、生きものを"感じる力"を育もう

 田んぼが身近にない都市部などであっても、生物多様性を感じることはできると、林さんは言います。「昆虫図鑑などを手に近所の公園へ行き、まずはよく見かける虫を調べてみましょう。よく見る虫の名前を覚えると、見たことのない虫にも気づいたり、興味を持てるようになりますよ」

 今の時季、少し大きな公園ならイモムシやチョウ、ガ、ハチ、トンボ、バッタ、カマキリ、セミなど、さまざまな生きものに出合えます。「むやみにつかまえるのはよくありませんが、身近な場所にいる生きものなら、数日くらい飼ってみるのもいいでしょう。何を食べるのか、どのように手足を使うのか、飼って初めてわかることもあります。"生きる"ということ、そして身近な生きものを理解するうえで、飼育と観察も有効な手段です」

近くの公園でも、発見はいっぱい。子どもといっしょに、図鑑を片手に出かけてみましょう

 水辺のある大きな公園ほど生物多様性が感じられるそうですが、公園をブラブラ散歩しているだけでは、生きものには出合えないかもしれません。「生きもの観察のコツは、ゆっくり歩く、そしてときどき立ち止まること。じーっと花や草木を眺め、意識を虫や鳥に向ける。みなさんに伝わるかどうかわかりませんが、『自分のアンテナを、虫や鳥の周波数に合わせる』のです。虫とりが上手な子どもは、これができる(笑)。生きものの気配を、感じてください」

 人間も「生物多様性の一員」。公園を散歩するなかでパッと生きものを見つけられるようになったとき、大人も子どももきっとそれを実感できるのではないでしょうか。

取材・文/櫻井忍 構成/編集部