絵本作家のたかいよしかずさん

どうしたら友達を作れる? 好きなことを見つけられる? 絵本作家たかいよしかずさんのメッセージ

  • 暮らしと社会

進級や進学といった環境の変化や人間関係など、さまざまな要因で不登校になってしまう小中学生が増えているという(※)。仲のよい友達や自分の好きなことを見つけられれば楽しく学校に行けるけれど、「見つけ方が分からない」という子も少なくない。 たかいよしかずさんが書いた絵本、『ともだちのつくりかた』と『すきなことのみつけかた』には、子どもだけでなく大人にも通じる、友達や好きなことを見つけるためのヒントが詰まっていた。著者のたかいさんが絵本に込めたメッセージとは?

※文部科学省 平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査より

「いい友達と出会ってほしい」という思いから生まれた絵本

――『ともだちのつくりかた』という絵本を作るきっかけは、数年前に起きた少年事件だったそうですね。

たかいよしかず(以下、たかい) そうなんです。事件のことを知って、「ありえへん」と、何だかすごく腹が立って。でも、その気持ちをどこにぶつけていいのかが分からなかった。自分は絵本作家という、子どもたちに思いを伝えられる仕事をしていたのに、何もできていなかったのかなという思いもありつつ、じゃあこれから何ができるかと考えたときに、「いい友達に出会えるきっかけを作れれば」と思ったんです。

 被害に遭った子に別の出会いがあれば、事件に巻き込まれることもなかったかもしれない。だったら、どうやって友達を見つけたらいいのかを伝えられるような、そんな絵本を作りたいと思って、出版元である大日本図書の當田さんに、「友達を作るための絵本が作りたいんです!」と思いを伝えました。

手前が著書「ともだちのつくりかた」「すきなことのみつけかた」。奥はラフや企画書。

たかいさんの著書『ともだちのつくりかた』『すきなことのみつけかた』

――たかいさんの熱い思いが伝わったんですね。

たかい 「こんな事件ありましたよね!おかしくないですか?」って、ブワーッと當田さんに話したんです。そしたら、「分かりましたから落ち着いてください」って(笑)。當田さんとメールでやり取りしながら企画書を作って、本を出させてもらうことになりました。

自分を好きになれたら、友達作りに必要なことが分かる

――絵本の主人公「たかいよしかずくん」が一緒に友達の作り方を考えていく、という構成がとても面白いですね。

たかい 今回は小学生に向けた絵本なので、易しくかみ砕いた構成にして、多くの人に伝わるものにしたいと思ったんです。「自分が小学生のときはどうだったかな?」ということを考えながら、思い出しながら作ったので、主人公の名前は、「たかいよしかずくん」にしたんです。

「ともだちのつくりかた」の一部より。主人公たかいよしかずくんの自己紹介ページ。

『ともだちのつくりかた』より

――著者であるたかいさんご自身が「僕はこうだけどきみたちはどう?」と問いかけてくれるので、より深く心に響きます。

たかい そう言っていただけるとうれしいです。友達を作るには、まず、自分がどういう人間なのかを知って好きになることが大事だと思うんです。それで、好きな色や好きな食べ物、将来の夢などを書き出してもらうページを作りました。自分のことを知って、自分を好きになれたら、どんな子と友達になりたいのか、友達になるために必要なことは何かが分かるかなと。それを踏まえて、チャートのゲーム方式で友達を作る方法を、楽しみながら考えてもらいたいと思ったんです。

「ともだちのつくりかた」の一部より。将来の夢や好きな物など、たくさんあるイラストの中から選び取っていく仕立て

『ともだちのつくりかた』より。選びながら読み進められる内容

――低学年の子でも楽しく読めそうですよね。「友達を作るために自分のことを知る」という考え方は、目からうろこでした。読者の反応はいかがでしたか?

たかい 子どもたちよりも、親御さんからの反響が大きかったですね。ふだんは積極的にお孫さんと話さないというおじいさんから、「今まで孫がどんなことを考えているか分からなかったのですが、一緒にチャートをやって少し分かりました」というお手紙を頂いて、そういうふうに読んでくれているんだとうれしくなりました。

どうして勉強をしなきゃいけないの?

――シリーズ2作めの『すきなことのみつけかた』は、子どもからの「どうして勉強をしなきゃいけないの?」という質問の答えとして書いたとあとがきにありました。

たかい 最初は、『ゆめのかなえかた』という本を2作めにしようと考えていたんです。でも、文章を書き出したら、「夢のことを語る前に勉強が必要だな」と思いました。勉強して知識を身につけて、本当に好きなことを見つけることが夢をかなえるためのスタートですから。

 そう考えたら、講演などでよく聞かれる、子どもたちからの「何で勉強しないといけないの?」という質問の答えにもなるんじゃないかなと。

「すきなことのみつけかた」の企画書

『すきなことのみつけかた』の企画書。たかいさんはまず、文章で構成を作る

――勉強して知識を得れば、夢の選択肢も広がるということですね。

たかい 僕も勉強が嫌いで、ずっと「何で勉強しないといけないんだろう」と思っていました。親から「勉強しなさい!」と言われるたびに、「大人になったら必要ないのに」って(笑)。でも、この本を作るときに振り返ってみたら、いろいろなことを少しずつ勉強したから好きなことを見つけられたんだと気づいたんです。

 勉強して身につけた知識は、好奇心と想像力に育っていくんですよね。その二つは考える力に結びつきます。そのために勉強が大切だということを、子どもたちに伝えたい。

「すきなことのみつけかた」の一部。考えるときのコツは「こうきしん」「そうぞう」「くふう」を組み合わせて考えること

『すきなことのみつけかた』より。勉強で身につけた好奇心と想像力は考える力に

――たくさん勉強して、本当に自分の好きなことを見つけられたら、それが心の支えにもなってくれますよね。

たかい 好きなことに夢中になれば毎日楽しいですしね。それが特技になれば自然と自信もついてくる。よくお笑い芸人さんとかが、「小さいころはいじめられていたけど、面白いことを言ったらいじめられなくなった」みたいな話をするじゃないですか。僕にとってはそれが絵をかくことでした。絵をかくのが好きで、漫画の絵とかをかいているうちに、「何かかいて」と友達が集まってきて、かいてあげると喜んでくれる。好きなことは、他人とつながるきっかけになると思います。

たかいさんが毎日持ち歩いているアイデアノートより。ある日のアイデアの一部

思いついたことはいつも持ち歩くアイデアノートに書き出す

「自分を肯定する=好きでいる」ことはとても大切なこと

――自分の得意なことで周りの人に喜んでもらえるとうれしいですよね。

たかい それが、よくいう「自己肯定力」につながりますよね。僕はよく「自己肯定力がめちゃ高いよね」と言われるんですが(笑)、「自分を肯定する=好きでいる」ことだと思います。自分自身への自信につながっていくことなので、大切にしたいですよね。

――「自己肯定力」は子育てでも重要だといわれていますが、例えば、たかいさんのご両親はどんなかたでしたか?

たかい 父親は出不精な人でした。「車に乗ると酔う」とか言って、家でゴロゴロしているような(笑)。反対に母親はとにかく出掛けたい人で、僕と弟は「汽車を見に行こう」「仏像を見に行こう」と、けっこういろいろな所へ連れ回されました。

 母親は洋裁の先生もやっていて、家にはきれいな糸や図案集がありました。それらを見ては「かわいいな」と思っていたので、今の仕事に就いたのは母親の影響が大きいと思います。母親には「勉強しろ!」とはよく言われましたけど、絵をかくことを反対されたことはなかったです。好きなことを突き詰められたのはよかったと思います。

笑顔のたかいよしかずさん

ささいなことで感動できる感性が人生を豊かにする

――好きなものを見つけるためにたかいさんご自身が心掛けていることはありますか?

たかい 僕は雲や空がすごく好きなんですけど、この間、道を歩いていたらゴジラみたいな雲を見つけて、「わあ、ゴジラみたいや!」ってうれしくなって(笑)。夕焼けや虹、夕立でもいいと思うんです。ささいなことを感じて、「楽しいな」とか「きれいだな」とか、感動できる感性をなくさないようにすれば、好きなことが増えていくと思います。しかもそれって、楽しいことですよね。

 もちろん日々、大変なこともありますけど、切り替えるスイッチを意識的に持つといいのかなと。大それたことじゃなくていいんです。僕は漫画が好きでよく読むんですけど、「今日は大好きな漫画の発売日だから一日頑張れる」とかあるじゃないですか(笑)。それで、好きな漫画がたくさんあれば、漫画の数だけ発売日があって楽しいですし。

 大変なことやつらいことも、楽しいと思えること、好きなことによってリセットできたらいいなと思うんです。

熱心に話すたかいよしかずさん

取材協力=大日本図書 取材・文=石本真樹 写真=疋田千里 構成=編集部