紫外線には、骨や免疫に関わる“いい影響”もある
――紫外線と聞くと、やはりシミ、シワが連想されます。紫外線が人体に与える影響について教えてください。
桐村里紗(以下、桐村) まず、紫外線のいい影響についてお話ししましょう。紫外線には骨の形成や免疫に関わるビタミンDを皮膚で生成するという重要な働きがあります。この観点は抜けがちで、「紫外線は百害あって一利なし」と思っている人も多いようです。
――私もそう思っていました。紫外線にそんな効果があるとは!
桐村 ビタミンDにはさまざまな働きがあります。不足すると、乳幼児はくる病、成人は骨粗しょう症、骨軟化症になるほか、免疫機能低下、アレルギー疾患、季節性うつ、自閉症、動脈硬化、糖尿病との関連も指摘されています。感染症対策にも必要ですし、幸せホルモンと呼ばれる神経伝達物質のセロトニンや、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンを生成するうえでも重要な触媒になります。ビタミンDが不足すると心身の健康が保てないのです。
コロナ禍で外出を控えていた人が多いせいか、近年は栄養療法の外来でビタミンDの血中濃度が低下している人が多く見られ、場合によっては測定できないという異常事態も報告されています。ビタミンDは鮭や天日干しのきのこ類など食材からもとれますが、やはり短時間でもいいので日に当たることをおすすめします。
――1日にどれくらい日に当たればいいのでしょうか。
桐村 日光浴の時間は、場所や時刻、天気、皮膚のタイプによって違うので一概には言えませんが、例えば、顔などのシミを防ぎたいところは日焼け止めで守り、手足は適度に日にさらすなど、どこか抜きどころを作るといいですね。私は公園などで手のひらを太陽に向けて散歩しています。
悪影響を及ぼす紫外線の種類
――なるほど。では、悪い影響はどのようなものがあるでしょうか。やはりシミ、シワですよね?
桐村 そうですね。紫外線は浴びすぎることで、やけどのように皮膚に赤く炎症を起こす急性障害と、その赤みが消失したあと、慢性障害を引き起こします。慢性障害には、①シワ・たるみ ②シミ・日光黒子 ③良性腫瘍 ④がんの前段階である日光角化症 ⑤皮膚がん があります。
――皮膚がんの原因にもなってしまうのは怖いですね。なぜそのような影響があるのでしょうか。紫外線が人体に悪影響を与えるメカニズムについて教えてください。
桐村 紫外線は、コラーゲンなど皮膚の構造物にダメージを与える活性酸素を皮膚の上で作ります。シワ、たるみ、くすみを引き起こす酸化ストレスの一種です。皮膚の表面を覆う表皮だけでなく、奥深くの真皮まで紫外線が届くと、コラーゲンにダメージを与えて深いシワの原因になります。
紫外線には、UVA、UVB、UVCの3種類があります。紫外線の約9割を占めるのはUVAです。UVAは肌の深くまで届き、シワやたるみを引き起こします。UVBは、ビタミンDを効果的に生成することができるので、ある程度は浴びる必要があるのですが、浴びすぎると肌表面に悪影響を起こします。すぐに赤い炎症を起こし、シミや色素沈着の原因になるのがUVBです。UVCはオゾン層に吸収され地上には届きません。
そんな紫外線をブロックするため、皮膚ではメラニンという色素が増えます。そのため皮膚が黒くなります。メラニン自体に肌への悪影響はありません。ただ、過剰なメラニンはシミや色素沈着の原因となり、美容的な観点で問題を感じる人が多いでしょう。
紫外線リスクの予防には、日焼け止めを
――紫外線の悪影響を防ぐには、やはり日焼け止めを塗ったほうがいいのでしょうか。
桐村 そうですね。紫外線は日傘だけでは防ぎ切れず、特にUVAは屋内にいても窓ガラスを通過します。また、薄曇り程度の雲では、UVBの80〜90%が透過します。さらに、地表面から反射する紫外線もあります。
また、紫外線量のピークは真夏だけと思っている人が多いのですが、日本では4〜5月から急激に増え始めます。最も少ない冬でも全くないというわけではありません。雪が降れば地表面の照り返しの影響も大きい。肌のことを考えると、日焼け止めは通年つけておくのがいいでしょう。
――赤ちゃんからお年寄りまで、みんなつけたほうがいいですか。
桐村 基本的には全年齢対象ですが、個人的には乳児には塗らなくていいと思っています。理由はビタミンDの生成です。乳児にとってビタミンDは発達に影響するので、過剰に紫外線を防ぐ必要はありません。顔は塗ってもいいかもしれませんが、手足は適度に日光に当たりましょう。高齢者に関しては、加齢とともに皮膚がんのリスクが高まります。「シミ、シワはもう気にしない」ではなく、きちんと紫外線予防をしたほうがいいでしょう。
本当に効果がある日焼け止めの使い方
――さまざまな日焼け止めが販売されていますよね。どれを選べばいいか迷ってしまいます。
桐村 形状だけでも、リキッド、乳液、クリーム、ジェル、スプレー、パウダーなどさまざま。スプレーは比較的肌に負担がかかり、パウダーは肌に優しいものも多くあります。お化粧の上から直すときは、パウダーが便利ですね。水溶性のジェルは水で落ちやすく、油性のクリームは落ちにくいという特徴があります。
日焼け止めを選ぶ際、目安のひとつになるのが、SPFとPAです。SPFはUVBを防ぐ効果の目安で、日焼け止めを塗った場合と塗らない場合を比較し、肌が赤くなるまでの時間が何倍かを示しています。「SPF30」なら、日焼け止めを塗らない場合と比較して、赤くなる時間を30倍遅らせることができるという意味です。「1〜50+」で表示されます。PAはUVAを防ぐ効果の目安です。4段階の「+」マークで表示され、「+」の数が増えるほど防御効果が高いことを意味しています。
――SPFもPAも、なるべく高い数値のものを購入すれば安心ということでしょうか。
桐村 いえいえ、そんなことはありません。炎天下でのレジャーの場合はSPF30、PA+++以上が望ましいのですが、高い数値のものは皮膚への負担がかかるので、日常使いであれば、SPF20〜30、PA++程度で十分とされています。
じつは、数値の高い日焼け止めを使うことよりも、小まめに塗るほうが大切なんです。日焼け止めは汗をかくと落ちてしまいますので、2〜3時間おきに塗り直しましょう。プールや海に入る場合には、ウォータープルーフタイプを使い、やはり小まめに塗り直しましょう。
――ほかに、日焼け止めを使う際のスキンケアのポイントがあれば教えてください。
桐村 紫外線を浴びることで皮膚のバリア機能が低下して、水分が蒸発しやすくなっています。皮膚構造を保つために保湿はしっかりしましょう。保湿ができていれば皮膚のバリア機能が保たれて、紫外線も含めさまざまな外的刺激から守ってくれます。
スキンケアの基本は、クレンジングをしっかりしたうえで保湿すること。クリームやウォータープルーフの日焼け止めは付着力が強いので、クレンジングできちんと落としましょう。
日焼け止め、紫外線の防ぎ方は2種類あった
――紫外線を防ぐ成分について違いはありますか。
桐村 日焼け止めに含まれる紫外線防止剤には、大きく分けて、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤があります。
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収して熱エネルギーに転換・放出し、日焼けを防ぎます。伸びやすく使いやすい質感ですが、熱エネルギーに転換する化学反応が肌に負担をかけやすく、かぶれを起こす人がいます。塗ってみて赤くなった、ピリピリと刺激を感じるといった反応があれば使用を中止してください。
一方、紫外線散乱剤を使用している日焼け止めは「紫外線吸収剤不使用」「紫外線吸収剤フリー」「ノンケミカル」と表示されています。このタイプには、UVAを防ぐ酸化亜鉛、UVBを防ぐ酸化チタンが含まれ、紫外線が皮膚に届かないように散らして日焼けを防ぎます。酸化亜鉛や酸化チタンはミネラル成分なので、肌への負担が軽く、アレルギーを起こしづらいため安全です。敏感肌の人や子どもでも安心して使っていただけます。少しゴワゴワした感触で白浮きしやすいのがやや難点です。ちなみに、紫外線散乱剤のタイプであればせっけんで落とせますので子どもでも使いやすいです。
――そんなに違いがあったとは。購入するときは成分をよくチェックしようと思います。
肌だけでなく、地球も守ろう
桐村 ところで、紫外線吸収剤は、肌に負担をかけるだけでなく環境にも負荷をかけていることをご存じでしょうか。
サンゴの白化現象によるサンゴ礁の減少が世界中で問題になっていますが、紫外線吸収剤の成分の一部、オキシベンゾンとオクチノキサートが原因のひとつとなっていることがわかっています。
国と地域によっては、サンゴ礁を保護するために紫外線吸収剤を含んだ日焼け止めの販売、持ち込みも含め使用を禁止しています。
一方、紫外線散乱剤の成分である、酸化亜鉛や酸化チタンは海にも含まれる天然鉱物なので、環境への影響も少ないのです。
――そうだったんですね。肌への影響だけでなく、環境への影響も考えて日焼け止めを選びたいですね。
桐村 そうですね。肌にも環境にも優しい日焼け止めを小まめに塗って、紫外線によるダメージはしっかり予防しつつも、適度に日光浴をしてビタミンDを生成し、上手に紫外線とつきあっていきましょう!