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話し合う学生たち

「1人の100歩より、100人の1歩を」 暮らしから実践できる「気候変動アクション」を学生たちと考える

  • 環境と平和

9月に行われた国連気候行動サミットでのグレタ・トゥーンベリさんのスピーチが注目を集めている。国連が2015年に採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」には「気候変動に具体的な対策を」と明記され、同じ年に「パリ協定」(※1)も採択された。しかし、「気候変動が深刻」といわれても、「どうしたらいいの?」と悩む人も多いだろう。聖心女子大学文学部教育学科教授の永田佳之さんのもとで学びを深める学生たちとともに、暮らしからできる実践について考えた。

※1:気候変動を抑制するための国際的な協定。産業革命前からの平均気温上昇を2℃未満に抑えるため、21世紀後半に世界全体で温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目的とする。

気候変動と向き合い、足元から暮らしを変える責任

――皆さんが気候変動に関心を持ち、勉強や活動に取り組み始めたきっかけから、まず教えてください。

岡田英里(以下、岡田) わたしはエシカル協会の末吉里花さん(※2)との出会いが大きかったです。昨年、聖心女子大学で開かれた「エシカルフェスタ」に運営メンバーとしてかかわったとき、末吉さんといろいろお話しさせていただきました。

 わたしたちのふだんの暮らしが、気候変動に密接につながっていること。気候変動の問題を解決するためには、自分の足元から暮らしを変える責任があること。そのことを、末吉さんが教えてくれたんです。

参考:世界もわたしもハッピーにする、思いやりのあるお金の使い方。末吉里花さんに聞く「エシカル」(KOKOCARA)

岡田英里さん

岡田英里さん

田坂優希(以下、田坂) 高校生のとき、ドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償~』(※3)を見たのがきっかけです。

 洋服を製造する大企業が、自然を壊して原料を調達したり、労働者を安い賃金で働かせたり、そうした環境の中でわたしたちの洋服が製造されていることを知り、驚いたんです。

田坂優希さん

田坂優希さん

神田和可子(以下、神田) 薬膳料理を勉強したこともあり、以前から食文化に興味がありました。ブラジルで自給自足をする共同体の村(農場)を訪ねたとき、食と暮らしの原点を目の当たりにして、“モノや食”がどこで、どのように作られているのか、その背景に関心を持ちました。きっかけとしては、それが大きいですね。

 詩人で気候変動活動家のキャシー・ジェトニル=キジナーさん(※4)との出会いも忘れられません。いろんな出会いや学びが重なって、気候変動の問題を意識するようになりました。

神田和可子さん

神田和可子さん

徳田菜苗(以下、徳田) わたしは中学生のころから、フェアトレードや難民のことを授業ではなく学校生活の中で触れることが多く、気候変動への問題意識が自分の中に根づいていきました。

 高校1年のとき、英語のディベート大会に出場して、原子力発電のことを議論したんです。そのとき、政府が事実を隠し、国民から見えないところで原発の推進といった大事なことを決めていると知り、ショックで……。それも関心を持ったきっかけです。

徳田菜苗さん

徳田菜苗さん

※2:一般社団法人エシカル協会代表理事、日本ユネスコ国内委員会広報大使。TBS系テレビ番組『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして、世界各地を旅した経験を持つ。エシカル消費の普及を目指し講演を重ねている。

※3:原題:The True Cost(2015年製作、アメリカ)、監督:アンドリュー・モーガン。労働者の劣悪な職場環境、河川や土壌汚染など衣料産業の真実と闇を暴いたドキュメンタリー。

※4:マーシャル諸島生まれ。2014年の国連気候変動サミットでは、自作の詩を通して、海面上昇で国土が沈みつつある故郷・マーシャル諸島の危機を訴えた。

気候変動の影響を受ける最初で最後の世代

――永田佳之さんは学生の指導に当たられ、『気候変動の時代を生きる 持続可能な未来へ導く教育フロンティア』(山川出版社)の編著者でもいらっしゃいます。気候変動と向き合う中で、なぜ「教育」が必要なのでしょうか。

永田佳之(以下、永田) 持続可能な社会にするためには、地球規模課題である気候変動を、何とかしなければいけません。子どもや若い世代に関心を持ってもらうためには当然、教育が必要となります。

 とくに近年、ヨーロッパを中心に、気候変動をめぐる問題が大きく取り上げられています。そうした背景があり、国連ESD(持続可能な開発のための教育)の中で、「気候変動教育」が重要視されていったんです。

永田佳之さん

永田佳之さん

――日本での「気候変動教育」は進んでいるのでしょうか。

永田 残念ながら、ヨーロッパなど世界各国に比べると遅れています。気候変動の問題を自分事とせず、先送りにしてしまう日本人が多いのかもしれません。

 でも、これから社会へ出る学生たちは違います。自分事としてとらえ、自分たちで動く。そこには将来への危機感、若者なりの正義感を感じます。その意味では今後、日本でも広がっていくと思いますね。

色で示された地球表面の温度変化のシミュレーション

地球表面の温度変化のシミュレーション。1951~80年の間の平均を基本温度とし、それよりも高いときはオレンジで表示(聖心女子大学グローバル共生研究所の展示「ファッション×気候変動」より)

――国連が2015年に採択した「SDGs」には、持続可能な開発目標が17項目あり、「気候変動」はその一つです。「だれも置き去りにしない」というSDGsの理念は、「正義感」ともつながりますね。

永田 豊かな暮らしを享受する先進国がCO2をたくさん出し、自然に近い暮らしを続ける途上国の人たちが気候変動の影響や自然災害を受ける。こうした理不尽さを許せない気持ちを「気候正義」(climate justice)と呼びます。

 「気候正義」は、人間の命を大切にする感覚ともいえます。今の社会を寛容に受け止めつつ、自分たちなりのやり方で気候正義を貫く。この大学には、そうした学生たちが多い気がします。

「地球温暖化リミットまであと0.5℃」と書かれた温度計の模型

展示「ファッション×気候変動」より

――先ほど学生の皆さんのきっかけを伺い、気候変動に対する強い問題意識を感じました。

永田 自然災害にしろ、経済格差にしろ、わたしたちは未来を予測できない時代を生きています。

 とくに今日集まった学生たちのような今の若い世代は、気候変動の影響を受ける最初で最後の世代といわれています。それだけに、自分たちの将来に対して危機感を抱いているといえますね。

永田佳之さん

――豊かな暮らしを送る人間がCO2をたくさん出し、自然に近い暮らしをしている途上国の人たちが気候変動の被害を受ける。学生の皆さんは、それに加担している意識はありますか。

神田 加担というか、“自然に”暮らしていないですよね。スーパーでは、しゃぶしゃぶ用のお肉がスライスされて、パックされて売られている。

 パックすることで、ビニールを作るためなどに余計なエネルギーを使っている。便利になればなるほど環境を破壊している社会の仕組みに、疑問を感じます。

神田和可子さん

徳田 自分の暮らしが、気候変動に間接的に影響していることは感じます。ホテルでアルバイトをしていますが、レストランでは大量の食料廃棄が出ます。それを食べたり、持ち帰ることは許されていません。

 手つかずの食べ物を土管みたいなごみ箱に捨てるとき、「これでお金をもらう自分は何なんだろう」とすごく矛盾を感じます。

徳田菜苗さん

自分だけのこだわりを作って、小さな積み重ねを

――学生の皆さんが中心になって、学内で展示会「ファッション×気候変動」(※5)を企画されたそうですね。地域別一人当たりの衣服消費に伴うCO2排出量は、日本が世界で最も多く、世界標準の約5倍とは驚きました。

田坂 気候変動の問題を自分事としてとらえてもらうには、どうしたらいいのか。ファッションというフィルターを通せばいい、と考えたんです。

 ダンボールを学内中に設置して、押し入れに入れたままの服(死蔵衣服)を、約2か月かけて集めました。すると、なんと12箱分の大量の洋服が集まりました。このプロジェクトを「つくろう、わたしのファッション・ストーリー」と名づけました。

段ボールに入った服の山

段ボールに集められた「死蔵衣服」(写真提供=田坂優希)

岡田 アウトドアウェアブランドのパタゴニアからも、本学をはじめ全国11大学で責任ある消費について考えるイベント「Worn Wear College Tour」を開催しないかというお話がありました。わたしたちもその一環として、学内で洋服をリペア(補修)するワークショップや展示発表を行いました。古くなったり、着なくなった洋服も、リペアすればおしゃれに生まれ変わりますし、トレンドに合わせてリペアすることもできます。

 洋服に愛着を持つ喜びを、そこで感じてほしかったんです。そのうえで、モノを買う責任、消費する姿勢も考えてほしかった。自分が何を買うかによって、気候変動に加担するかもしれませんから。

展示された死蔵衣服と地球儀

死蔵衣服の展示(展示「ファッション×気候変動」より)

田坂 お店やインターネットのサイトには、いろんなデザイン、色、大きさの服が用意されていて、わたしたちに買われるのを待っている。それを着て、いらなくなったら捨てる。これまでのわたしたちの暮らしは、そうしたことの繰り返しだったと思います。

 でも、その前後に、いろいろな物語や背景があって、それぞれがつながっていることを知らない人が多いと思います。1枚の洋服ができるまでには、さまざまな人の犠牲や環境破壊があり、ごみになるとさらに自然環境を悪くするんです。

展示された死蔵衣服と溶ける氷河のようす

死蔵衣服の展示(展示「ファッション×気候変動」より)

――展示の中に、「あなた自身の暮らしで、なにができる?」というコーナーがありました。「残さずおいしく頂く」「モノに愛着を持つ」などなど、集まったアイデアには親近感が持てますね。

永田 「無理をしない」というのはありますね。1年生に、「夏休みにどんなアクションを起こすのか」と質問したら、面白いんですよ。「(容器ごみを減らすため)極力、タピオカドリンクを飲まない」「ペットボトルは3本以内」とか。

アイデアが記入されたアンケート

「どんなアクションを起こすのか」のアイデアシート

神田 結局、飲むんだ(笑)。

徳田 自分に優しすぎるよね。

岡田 逆に続くかも。ペットボトル3本が2本になり、1本になればいいわけで。

アイデアが書かれた付箋が張られたボード

「あなた自身の暮らしで、なにができる?」(展示「ファッション×気候変動」より)

――皆さんは、どんなアクションを起こされていますか。

徳田 「シャワーの水を出しっぱなしにしない」「ごみの分別をする」「服は長く使えるものを買う」など、日常のちょっとしたことを意識しています。

田坂 マイボトルを持つとか、小さなアクションの積み重ねをわたしも意識しています。広く、浅く、楽しく、無理なく。気候変動のような大きな問題は、ちょっとずつしか変えていけないので、継続が大事ですよね。

 小さな積み重ねなら、気候変動に意識のない人たちでも、今すぐできることじゃないかな。

田坂優希さん

岡田 自分だけのこだわりを作ることが、小さな積み重ねになると思います。わたしは、自分が何を捨てているのか、ごみのチェックを毎日やっています。何を捨てているのか、細かくチェックすることで、改善すべき点が見えてきます。

 たとえば、塩化ビニールといった環境に負荷を与える化学素材のラップごみが多いことに気づき、天然素材の蜜蝋(みつろう)ラップに替えました。続けることで見えてくることがあるし、何より楽しい。やろうと思ったら、だれにでもできます。

ノートに書かれたごみのチェックリスト

ごみのチェックリスト(写真提供=岡田英里)

神田 わたしは断捨離かな。捨てて、ごみにする断捨離ではなくて、寄付したり、リサイクルに回す。古着や雑貨など、探せばいろいろなものを受け取ってくれる団体も多いです。ごみをごみとしてではなく、資源として捉えられるようになりますし、次に新しいものを買うときの学びにもなります。

永田 『気候変動の時代を生きる』の帯に、「1人の100歩より、100人の1歩らしいよ…」という言葉を入れました。そうした学生が増えている実感はあります。

 例えば、「ペットボトルの飲み物は絶対飲まない」という選択だと、長続きしないことを、学生たちは知っています。そうではなく、一人が1本減らすことを考える。

 気候変動の状況はたとえ深刻でも、それに対してしなやかに向き合い、問題解決へのプロセスを楽しんでいるように感じます。

※5:「ファッション×気候変動」(2019年4月1日~8月30日、聖心女子大学4号館/聖心グローバルプラザ)。現在は「女性と社会的弱者にとっての気候変動」というテーマで展示中(2019年9月5日~2020年4月28日)

永田佳之さん

楽しみと喜び。希望を分かち合う営みへ

――自分一人だけが頑張ることに、限界を感じませんか。周りの人の気持ちを変えるというのも、簡単ではありません。

神田 わたしが今日着けているピアスは、スリランカのサリーの生地で作ったものです。お店でこうした商品を見つけると「仲間だ!」と思って、「どうして仕入れたんですか?」とかお店の人に聞いたりします。

 応援する気持ちで、意見を言うこともありますよ。「すごくおいしいオーガニック料理でした。使い捨てのストローをやめたら、もっといいかも」とか。

手に載せられた黄色のピアス

岡田 自分から何か始めることでしか得られない価値観、喜びはありますね。神田さんの積極的に話しかける姿勢も、それと同じだと感じました。

 気候変動に対する悲しみや絶望を周りに伝えるのではなく、それを変えていく楽しさ、希望や明るさを伝えたい。ごみのチェックも、その過程を楽しむことで、ある種の幸福感が芽生えてくるので。

岡田英里さん

神田 喜びや楽しさといえば、スリランカへのスタディツアーが、まさにそうでした。古着を使ったエコバッグや、捨てられるココナツの殻でキャンドルや写真立てを作ったり、空のペットボトルを楽器がわりにして演奏会をやったり。最終日には保護者を招いて発表会を行いました。

子どもたちとの集合写真

スリランカでの子どもたちとのエコバッグ作り(写真提供=神田和可子)

徳田 すごく楽しかった。子どもたちが持ってきた古いTシャツを切って、エコバッグに仕立てたんです。「お兄ちゃんが着て、僕が着て、もう着る人がいないんだ」と持ってきてくれた子もいました。

 地元の人たちは、はすの葉で水をくんだり、食器がわりにするんです。作ったばかりのエコバッグに、はすの葉をいっぱい詰めて使う村の人もいました。

エコバッグを手にする子どもたち

エコバッグを手にする子どもたち(写真提供=神田和可子)

――永田さんは、持続可能な社会をテーマにしたスタディツアーや展示企画に、学生たちを積極的に参画させていらっしゃいます。教育カリキュラムを考えるうえで、意識されていることはありますか。

永田 「地球規模の問題が日常化している時代だけど、皆で希望を抱いて生きていける」という実感が持てる社会。それを世代や人種の壁を超えて共有することの大切さを伝えたいですね。

 スタディツアーでは学生たちが、スリランカやオーストラリアのカンガルー島(※6)を訪ねています。気候変動による干ばつが起きるなど、現地では深刻な問題も起きています。

 その中で学生たちは、地元の子どもたちと一緒に“希望を分かち合う営み”を実感したはずです。その実感にこそ、これからの気候変動教育を考えるポイントがあるとわたしは思います。

※6:オーストラリアの南方に位置する人口約4,000人の島。島ぐるみで再生可能エネルギーを取り入れるなど、気候変動に対する積極的な政策と実践を行い、自然と共生する暮らしを目指している。

エコハウスの住人の話を聞く学生たち

カンガルー島で家庭菜園、雨水タンク、太陽光発電などを取り入れたエコハウスを視察(写真提供=岡田英里)

“命”に対して、システムが寄り添う社会。大人の仕事と責任

――これから社会へ出る世代として、大人に言いたいことはありませんか。

岡田 今年7月の参議院選挙には、憤りを感じました。年金や消費税、福祉のことばかりで、気候変動が争点にならなかったじゃないですか。

 温室効果ガス排出を実質ゼロにし、世界の平均気温上昇を2℃未満に抑える「パリ協定」(2015年)に、日本も合意したわけですよね。それなのに、何をしているんだろう、と。

話し合う学生たち

徳田 うちの親がそう。政治の話では盛り上がるのに、環境問題になると黙ってしまう。わたしがやっている活動のことを話しても、「へえ」で終わってしまう。

岡田 そこはしつこく話すしかないと思います。気候変動のことは、学んだことを母に話すうちに、興味を持ってくれるようになったし。

 この前の参院選も「投票に行かない」と言うので、「わたしがお母さんに恩返しできるような社会を作るために、投票して」と頼んだら、次の日一緒に投票所に行ってくれました。

「VOTE OUR PLANET」のシールが張られたマイボトル

神田 身近な人も大事ですが、いろんな社会問題に取り組むNGOやNPOなど、自分が関心のあるテーマの団体を訪ねるのもいいと思います。

 そこで出会った若者や大人たちに、気候変動の話をすれば、違うフィールドで通じ合えるものがあるかもしれない。

神田和可子さん

岡田 大人には、一度立ち止まって、素直に現実を見てほしいです。地球の未来にかかわる喫緊の課題を、政治や経済の事情だけで決められたら、子どもや若者はたまったものじゃないですよ。

田坂 大人は若者の声を逃さず、ちゃんと向き合って聞いてほしい。わたしが所属している学生サークル「Earth in Mind」が、学長に「学内に冷水器を設置してほしい」などの提言を出したんです。冷水器を増やせば、ペットボトルなどのごみも減らせますから。

 学長は、わたしたちの声を受け取ってくれました。実現に向けた努力をしてほしいですね。若者の声に向き合うというのは、そういうことだと思います。

田坂優希さん

徳田 家族でも、友だちでも、近所の人でもいい。気候変動のことを知ったり、関心を持ったら、周りにも話してほしいんです。

 子育て中のお母さんであれば、子どもに話すだけでも、すごい広がりになるはず。それってすごくすてきな関係だと思いませんか。

――大人が目を向けるべき現実という意味では、気候変動だけでなく、格差社会や貧困の問題、戦争や難民問題も含まれます。

永田 おっしゃるとおりです。「命」に対して誠実に向き合っているのかどうか、大人の側が問われている。

 命が社会のシステムに寄り添うのではなく、命に社会のシステムが寄り添う。それは、子どもたちや若い世代が「大丈夫なんだ」という実感を持ち、前向きに歩んでいける社会だといえます。そうした社会にすることが、大人の仕事であり、教育の責任です。

永田佳之さん

だれもが希望の持てる社会を実現するために

――先ほど永田さんがおっしゃった「希望を分かち合う営み」は、わたしたち一人一人が気候変動と向き合う重要なキーワードだと感じます。最後に「希望」という視点で、皆さんの思いを伺えますか。

神田 スリランカへのスタディツアーでは、言葉や人種の壁を超えて、子どもたちとリサイクルの面白さを学ぶ場となりました。日本も、早くそういった社会になってほしい。

 だれとでもエコの話が自然にできる社会。多様な価値観を共有しながら、学び合い、喜び合う社会、それがわたしの中での理想であり、希望ですね。

徳田 来年の4月、社会人の仲間入りをすることがわたしの希望です。ブライダル関係の会社に就職するので、「エシカルブライダル」を提案するつもりです。

 例えば、子どもたちが重労働をして集めた石ではなく、正規の賃金が支払われ、安全な場所で採石されたダイヤモンドで、結婚指輪を作らせていただく。みんなが楽しく、幸せになれるアイデアは、いろいろあるはず。

発言する徳田さんと岡田さん

田坂 気候変動にしろ、社会問題にしろ、問題は山積。その中でどうやって、みんなで楽しく生きていくのか。やっぱり、人との出会い、体験に尽きますよね。

 問題をみんなで乗り越えていく喜び、ポジティブな気持ちは、意識の持ちようだと思うんです。そうした出会いや体験が増えることが、希望のある社会です。

テーブルを囲んで話し合う学生と永田さん

岡田 学べば学ぶほど、知れば知るほど、希望や楽しさに出会える。ポジティブに物事をとらえ、少しでも興味を持ったことには、わたし自身、これからも挑戦したいです。

 わたしだけではなく、大人も、若い人も、変化を恐れず、みんなで挑戦してほしい。その先に感動があるし、いろんなことに対して優しくなれる。それが希望の持てる社会につながると思います。

岡田英里さん

永田 “持続可能になりえない社会”を作ってきたのは確かに大人の責任です。一方で自分のできることから始めて、自己変容している大人は、日本にも、世界にもたくさんいます。

 いろんな人たちと、積極的につながってほしいと思います。自分の価値観と相入れない大人とも、対話してほしい。例えばSDGsも、それを目標にして動く大人がいれば、金もうけに利用する大人もいます。その両方が現実です。

 多様な人と対話し、大学で学び得た実感と価値観を、社会で開花させてほしいと願っています。

展示の前で集合写真

取材協力=聖心女子大学、株式会社山川出版社 取材・文=濱田研吾 写真=堂本ひまり 構成=編集部