写真=リチャード / PIXTA(ピクスタ)

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わが家はいくら捨てている? ファイナンシャルプランナーに聞いた「食品ロス」を減らすヒント

  • 暮らしと社会

「家庭で無駄にしてしまっている食べ物を金額に換算してみたことはありますか?」と問いかけるのは、ファイナンシャルプランナー・中村真佐子さん。食べ物を無駄にしたくないという思いはだれにでもあるものの、日本では、世界で飢餓に苦しむ約10億人への食料援助の2倍に匹敵する量の食品が、食べられないまま捨てられているという。無意識のうちに家計も圧迫している食品ロス。どうすれば減らせるのかを、中村さんと考えた。

家庭の食品ロスの2割は、手つかずのまま捨てられている

――まず、日本の食品ロスの現状を教えてください。

中村 「食品ロス」とは、売れ残りや期限を過ぎた食品、食べ残しなど、本来食べられたはずなのに廃棄された食品を指します。2015年の農水省の推計値でいうと、日本の食品ロスは年間646万トン。日本の米の生産量が約780万トンなので、私たちが1年間に食べるお米の約8割にあたる量の食品が、捨てられているというのが現実です。

話をしている中村真佐子さん。

写真=持城壮

 日本は食料自給率がわずか38%(※1)で、食料の6割を輸入に頼っています。つまり、貴重な燃料を使って運んできたものを、ごっそり捨ててしまっているということです。さらに、廃棄処理にかかる費用は年間2兆円とも。国全体で考えても、食品ロスは大きな経済的損失になっています。

――646万トンとは膨大な量ですが、それは全部事業者から出るものですか?

中村 いいえ、食品ロスの排出元の約半分は、家庭です。農水省の調査では、そのうちの2割が手つかずのまま、さらにその4分の1は、賞味期限前にもかかわらず捨てられているとあります。

日本の食品廃棄量と食品ロス量の内訳

日本の食品廃棄量と食品ロス量の内訳

農林水産省食料産業局資料(平成27年統計値)を基に編集部で作成

――約半分が家庭からとは…。事業者からの食品ロスはどのようなものですか?

中村 製造、卸売り、スーパーや小売などそれぞれの段階で、サイズや形が規格に合っていないもの、返品されたもの、売れ残りなどが食品ロスになっています。ただ、宴会や結婚披露宴などを含め外食産業から大量に排出される食品ロスの中には、私たちの食べ残しも含まれますね。

――事業者から排出される分も私たちの行動で変えられるかもしれない、ということですね。

中村 そうですね。

※1:2017年度カロリーベース

世帯あたりの金額を算出すると……

――中村さんは、ファイナンシャルプランナーとして、日ごろ、家計の相談も数多く受けていると思いますが、食品ロスについてはどう考えますか?

中村 支出を削減する観点からいえば、食費というキーワードが出てくるのは最後です。たしかに必要以上にお金を使わないことは大切ですが、食べ物は生きることに直結するもの。私は、まずは携帯代や保険など固定費で削れるところを探し、食費に関しては、買ったものをきれいに使い切るという方向で提案しています。

 ただし、食品ロスは別です。食品ロスは、家計管理上も、最も削減したいものの1つ。総務省の家計調査(3人世帯)を基に、家庭で無駄にしてしまった食べ物を金額に換算すると、1か月約2,500円、1年間で約3万円になります(※2)。この金額をどう思いますか?

――「3万円」ですか!? もったいないですね。

中村 食品ロスの内訳を見ると、金額が多いのは出来合いのお惣菜やお弁当などの調理食品や、野菜、果物です。

主な食品別食品ロス量割合(%)

主な食品別食品ロス量割合(%)

農林水産省食品ロス統計調査・世帯調査(平成26年度)

 調理食品は、ほかの食品に比べて捨てる率は低いのですが、調理のコストなども含まれた価格になっているので、頻繁に利用していて食費のなかで割合が大きい家庭では、いざ捨ててしまうと大きな金額になります。また、果物や野菜については、皮をむきすぎた部分も「過剰除去」として食品ロスにカウントされます。

 食品ロスというのは、買ってきたものをそのままごみ箱に直行させるようなもの。「冷蔵庫や食品庫に入れる」という行為が間に挟まるので、罪悪感が何となく薄れてしまうのですが、食べ物もお金も、買い物に費やした時間も、すべて無駄にする行為なのです。

※2:72,694円(2017年総務省家計調査3人世帯の食費支出)×食品ロス率3.4%(2014年農水省食品ロス統計調査)=2,472円。

記録することで、「捨てたくない」気持ちがわいてくる

――食べ物を捨てるということは、ある意味、お金を捨てるようなことでもあるのですね。食品ロスを減らすために、ファイナンシャルプランナーの視点からよいアドバイスはありますか?

中村 そうですね。効果的な方法として、自分がどのくらい食品ロスを出しているか、一定の期間、数量と金額を記録してみることをお勧めします。

 シートに、捨てたものの数量と、分かれば損失金額、捨てた理由をそのつど記します。例えば、130円で買った白菜を、半分腐らせて捨ててしまったら、損失金額は65円となります。料理の食べ残しや、いただいた果物など金額に換算できないものは数量を記入するだけでもかまいません。

食費&食品ロス記録シート

食費&食品ロス記録シート

©優益FPオフィス

 実は、これは2017年度に消費者庁が徳島県の一般家庭で行った実証実験(※3)で使われたものをベースにしたものです。この実験でも、4週間続けた結果、大きな食品ロスの削減効果が得られています。

――記録することで、なぜ食品ロスが減るのでしょう。

中村 記録の本来の目的は、自分の買い物や捨て方の傾向や癖を知ることですが、私自身、実際にやってみて分かったのは、シートを前にすると、「記録したくない」という気持ちがわいてくるのです。書きたくないから、何とか捨てないように工夫しようとがんばる、どうにかして食べようと思うんですよ。

――ふだん何気なくやってしまっている“捨てる”という自分の行為に、正面から向き合わざるを得ませんものね。

中村 そうなんです。食品ロスについて深く考えるきっかけになるんですよ。

 徳島の実証実験でも、「買い物に行く前に購入する食品を決めている」「1週間や3日分などの献立はまとめて決めている」「必ず食べ切るものだけを選んで買う」など、食品ロスの発生を抑制するための取り組みを行っていると答えた人の数が、実験前に比べて飛躍的に増えたんです。

 ずっとやり続けるのはつらいけれど、とりあえず、2週間とか4週間とか期間を決めてやってみて、現実に向き合うきっかけにしていただければと思います。

※3:平成29年度徳島県における食品ロスの削減に資する取組の実証調査

「見ようとしなくても見える状態」をキープする

――中村さんは主婦でもありますが、毎日の暮らしの中で心掛けていることはありますか?

中村 そうですね。何がどのくらいあるのか、在庫をしっかり把握するために、冷蔵庫や食品庫を「見ようとしなくても見える」状態にキープするようにしています。

 例えば、消費期間が短い肉や残ったおかずなどすぐに食べなければならないもの、納豆や豆腐など保存期間1週間前後のもの、もう少し長く保存できる食品、と冷蔵庫の置き場所を決め、その中でも、新しいものを入れるタイミングで、古いものを前に出すようにしています。

 ぱっと見て食材を使う優先順位が分かれば、献立も立てやすくなり、あとは必要な分だけを買い足せばいい、という好循環が生まれますからね。

――二重買いや買いすぎは、どうやって防いでいますか?

中村 やはり、メモが必須ですね。紙にメモしたり、それを写真にとったりといろいろ試してきましたが、今は、スマートフォンのメモアプリを利用しています。

スマホのメモアプリを開いているようす。

買ったら削除して、二重買いを防止(写真=持城壮)

――イレギュラーな頂きものなどがあると、食べ切れなくて困ってしまいます。

中村 よく分かります。私も、先日大きな白菜を頂いて、どうしようかと思いました。でも、レシピサイトを見ながら漬物に初挑戦してみたんです。意外とうまくできてうれしかったですね。

 今は、食べ切りや使い切りのレシピサイトも充実していますから、それらを利用するのもお勧めです。

きれいに食べ切れば、暮らしの満足度もアップ

――最後に、日々食品ロスを出さないように頑張っている読者の方々に、メッセージをお願いします。

中村 毎日の食事づくりだけでも大変なのに、食品ロスのことまで考えなければならないというと気が重くなりそうですよね。でも、食べ物をきれいに食べ切ることで、お金も無駄にせずにすむし、罪悪感もなくなる。結果的に暮らしの満足度がアップします。

市指定のごみ袋を手に持っている中村さん。

今はごみを捨てるのにもお金がかかるという意識をもつことも忘れずに(写真=持城壮)

 100%を目指すのではなく、まずは野菜室だけでも見やすいように整理するなど、小さなことから始めてみてはいかがでしょう。うまくいけば、1年で3万円のお小遣いが生まれるかもしれませんよ(笑)。

取材・文=高山ゆみこ 写真=持城壮 構成=編集部