はじめよう、これからの暮らしと社会 KOKOCARA

食と暮らし、持続可能な社会を考える、
生協パルシステムの情報メディア

中谷奈央子さん

写真=編集部

どうやって守る? 子どもの心と体。にじいろ先生と考える、これからの「性教育」

  • 暮らしと社会
「にじいろ」の名前で、性教育講師として活動している中谷奈央子さん。全国各地の学校で出張授業を行いながら、心のこと、体のこと、性のことを伝えている。ネットやSNSによい情報も悪い情報もあふれ返る今、子どもたちは大人が想像する以上に危険な世界に足を踏み入れていることもある。なぜ性教育が大切なのか、子どもを守るために大人に何ができるのかを考えてみたい。

学校で出会った、性のことで悩み、傷つく子どもたち

――中谷さんは学校の養護教諭を経て今のお仕事をされるようになったんですね。今に至るまで、どのような思いや出来事があったのでしょうか。

中谷奈央子(以下、中谷) 以前は小学校と高校で養護教諭をしていました。結婚をして産休育休を経て、さあ現場に復帰するか?となったとき、じつは、ちょっと私には子育てとの両立ができないと思ってしまって、一度仕事を辞めているんです。

 仕事は好きだったのですが、養護教諭という職業はフルタイム以外の働き方がどうしても難しくて。当時は時短やパートタイムという選択肢がなく、急な休みも取りにくかった。なので、「自信がなくて復帰できなかった」というのが正直なところです。

 当時の私は、それこそジェンダーバイアス注釈があったんですが、「母親である私が家のこと、子どものことを全部きちんとやらなければ」と思っていました。たぶん仕事をしだしたら、うまくバランスが取れなくなる。家庭のことは、自分が仕事を辞めさえすればうまくいくだろうと、夫に相談することもなくそう思い込んでいました。

 なので「専業主婦」としてやっていこうと決めたわけなんですが、もともと地方に住んでいて、さらに中心部から離れた場所に引っ越したこともあり……。数年経ち、ずっと家にいて子育てと家のことだけをやるというのが苦しくなってきて、家から出て何か自分にできることがしたいと思いました。

 そこで思い出したのが、高校で養護教諭をしていたときの生徒たちのことだったんです。

保健室

「学校の保健室は、心の調子が悪いときにも来てほしい場所」と、元養護教諭の中谷さんは話す(写真=PIXTA)

 彼らの卒業後や私の退職後に、じつは妊娠していた、性暴力の被害に遭っていた、セクシュアリティのことでいじめに遭っていた……そんな話を聞くことがあって。性のことで悩んだり傷ついたりする子どもたちのために、もっとできることがあったんじゃないかというモヤモヤが自分の中にあったので、じゃあそれを生かすことができないだろうかと。

 そんなとき、先輩の養護教諭の先生に「うちの学校で性教育の授業をやっているから、試しに話をしてみる?」とお声がけいただいたのが始まりです。今はありがたいことに、全国の学校から出張授業の依頼をいただいています。

ネットやSNS社会の不安。日本の性教育は遅れている?

――今と一昔前とでは、子どもたちをとりまく環境も大きく変化しています。今の子どもたちと直に接する中で、感じていらっしゃることはありますか。

中谷 やはりインターネットの時代になり、低年齢のうちからいろんな情報にさらされすぎていると感じています。ある程度知識がないと、情報の良し悪しを見分けることがあまりに難しい。なので、とんでもない情報を本気で信じてしまうし、商業的なアダルト用語はすごく知っているけれど体のしくみは知らない、といったちぐはぐが起きています。

 SNSも人間関係や性のトラブルの温床です。スマホを持つ以前だったらリスクはもっと限られた範囲、限られた相手でした。今は自分が何もしなくても、悪い人が一方的に近づいてきてしまいます。

スマホ

子どもたちにとっては、インターネットやスマホがあることが当たり前だ(写真=PIXTA)

 子どもが被害に遭うだけではなく、加害側になることが増えていることも心配です。しかも、まったく自覚なく。写真や動画を撮る、それをSNSに載せる、見知らぬだれかに会いに行く……。

 大人になってからスマホを持った世代だったら躊躇するようなことでも、小さいころからスマホに慣れ親しんだ子どもたちは簡単に、悪気なくそういうことをしてしまうんです。性的な危険に、あっという間に関与してしまう怖さを感じています。

――そんな時代だからこそ、性教育の重要性が指摘されているわけですが、諸外国と比べても、日本ではあまり進んでいないように感じます。

中谷 性教育のことを知れば知るほど、日本は遅れているなと思う部分がたくさんあります。まず、性というものの見方がタブーというか、触れてはいけないもののように扱われている。

 例えばコンドームは「性行為を助長しかねない」として、長崎県では2011年まで、18歳未満は購入することができないという条例がありました注釈18歳以上じゃないと買えないと思っていたり、体を守るための衛生用品なのに、アダルトグッズだと思っている子も少なくありません。

 出張授業のときも、学校によってはコンドームの話をすることを嫌がられます。学校が「そんな話をして風紀が乱れたら」「学校が性行為を勧めていると思われたら」って言うんですね。

性教育の授業のようす

中学生に「避妊」について教えたときのようす。性教育が進んでいる国では、避妊具を「大切なもの」としてとらえる(写真提供=中谷奈央子さん)

 国際的な性教育のスタンダードカリキュラム注釈では9歳から12歳――日本でいうと小学校中学年から中学生くらいで避妊について学ぶという指針が入っています。私が知る限りでは、現状それをやっている日本の小学校はほとんどないですし、中学校でも基本的には学びません。高校は、保健体育の教科書に載ってはいますが、コンドームのつけ方の実習やサンプルを配付しようとなると、反対されることもまだまだ多いです。

 北欧など欧州では特に進んでいますが、授業の中で性についてのディスカッションなども行われるそうです。今の日本では、一人ひとりが「性を語る」こと自体が難しいのではないかと思います。そのあたりが大きな差だと感じますね。

自分の心と体のことは、自分で決める権利がある

――性そのもののとらえ方が、海外と日本では根本から違うということですね。

中谷 妊娠というもののとらえ方も大きく違います。日本の義務教育では、妊娠の経過(性交)・中絶は学ばないんです。それって、義務教育年齢では妊娠する前提がそもそもないということですよね。高校でやっと避妊という言葉が出てきますが、それも結婚後のこととしての話。

 10代や未婚者は妊娠してはいけない――とはさすがに書いていないですが、それは「防ぐもの」というスタンスをすごく感じます。気をつけましょうね、責任ある行動をとりましょう、もし何かが起こっても自己責任ですよ……。

 国際的なガイダンスでは真逆です。「意図しない妊娠は起こるもの」と書かれているんです。スタンスが全然違う。「起こりえるものなので、意図しない妊娠をした女性は、必要なサービスを受ける権利がある」、そんなふうに文章が続きます。中絶に関する費用を無料にしている国もある。

 そういったケアも、性教育も避妊具も、「権利である」という考え方。初めて知ったときは衝撃でした。

中谷奈央子さん

日本では10代での妊娠に対し、非難の声が上がることが少なくない。中谷さんは「その風潮を変えたい」と話す(写真=編集部)

――十分な教育も受けないままに、起こってしまったときは責められる風潮が日本にはあります。権利という言葉にはハッとさせられます。

中谷 性について考えるときにヒントとなるのが、SRHRSexual and Reproductive Health and Rights/直訳「性と生殖に関する健康と権利」)という権利の存在です注釈。「自分の体は自分のもの」という考えをベースに、性や生き方について、個人の意志、個人の選択が尊重されるべきである、という基本的人権のことです。多くの国際条約や国際会議の文書などに明記されているにもかかわらず、日本ではまだあまり知られていません。

 結婚するかしないか、子どもを持つか持たないか、いつ何歳で何人子どもを持つか。それらはすべて個人の意志です。何を選んでも、他人がとやかく言うことじゃない。ましてや、国の政策で「子どもを産みなさい」なんて言われたくない。

 それらに関して十分な情報を得られ、必要な医療やケアを受けることができるということも、SRHRには含まれます。性教育が進んでいる国では、避妊も中絶も当然の権利であると、きちんと主張される。そして、若いのであればなおさら、大人や社会がサポートしていかないといけないよねという雰囲気があります。

 そもそも権利であることを自覚していないと、侵害されてもわからない。声を上げていいんだってことにも気づけない。何かが起きたときに自己責任だと思ってしまう。そうじゃない、やっぱりおかしいと思えるように、自分が持っている権利のことを、私たちはきちんと知るべきなんです。

「命が大切」じゃなく「あなたが大切」

――性教育は、自分の権利を知るための学びでもあるんですね。

中谷 「人権」というと、学校の授業でも扱われるテーマですが、障害や人種、性的マイノリティなど、特定の属性の人に対する差別問題の話になりがちのように思います。もちろんその問題における人権も大切ですが、その前に、私たち全員が多様な人間の一人であり、誰でも無条件に「権利」があるんだよという大前提があります。

 子どもたちは、自分のことをすっ飛ばして、人権は特定のだれかのもの、と思ってしまっているんですね。まず、あなたにもあるんだよということを伝えてあげたい。

性教育の授業のようす

体のことも心のことも、自分自身で決める権利がある、と伝えている(写真提供=中谷奈央子さん)

 授業の依頼を受けると、打ち合わせで学校から「命の大切さを教えてください」と言われることが多いのですが、私はいつも違和感を感じていました。「命を大切に」って言うだけで大切にできるんだったら、いじめも性暴力も自殺もとっくになくなっているよな、と。

 しんどい状況にある子たちには、漠然とした言葉で伝えても「この大人何もわかってない」と思われて終わりなんです。だから「命は大切」ということ以上に、「今ここにいるあなたが大切」というメッセージが必要なんだと思います。

――そのメッセージを伝えるために大人は何を意識すべきで、どんなことができるでしょうか。

中谷 心や体のことで悩んでいる子は、そんな自分のことが大嫌いかもしれない。たとえばそれで、自傷行為をしてしまう子もいます。

 そこで、「大切な体なんだから傷つけたらだめよ、自分を好きになろう」と言うのではなくて、「嫌いでもいいよ、自分を傷つけていたとしても、無条件であなたが大切なんだよ」と伝えてあげること。

 どんな自分でも否定されない、その経験を積み重ねてあげることで、本当に大切にされているという感覚を得られるのではないでしょうか。

 また、大人が一方的に「性教育はまだ早い」と決めつけてしまうこともありますよね。例えばギャルっぽい、目立つグループに属している生徒は性的なトラブルが心配だけど、まじめでおとなしい子は大丈夫だろう、とか。でもそんなこと、本人にしかわからない。早いとか遅いとかはないんです。

 子どもたちは、年齢に関係なく正しい知識を学ぶ、性教育を受ける権利がある。大人が子どもを一人の人間として尊重すること、権利を意識することが、子どもの身を守ることにつながるのではないかと思います。

性教育の授業のようす

どんな悩みもどんな考えも、否定せずに聞いてあげること(写真=編集部)

今、大人たちこそ変わっていくべき

――日本に住む多くの人が、これまできちんとした性教育を受けてこず、権利の自覚も希薄です。大人の側にもとまどいがあるのではないでしょうか。

中谷 先生たちも、自分が子どものときに学べていないですし、現状では学校の教員養成課程に性教育はほとんどありません。性がらみのトラブルが増加する中で、必要性を痛感していながらも業務で手いっぱいという現実もあります。

 出張授業の依頼が増えているのは、先生たちからのSOSだと感じています。生徒たちがネットでとんでもない情報を見て、それが日常会話に出てきたり、まねたりしてしまうとか、実際に被害に遭った、加害があった……だけどどう指導したらいいかわからない。助けてください、来てください、というような状況でお話をいただくこともあります。

 保護者向けの講座を行うこともありますが、親御さんの意識も変わってきていますね。「おうち性教育」という言葉が割とポピュラーになったり、ファッション誌で性教育が特集されるようになったり。スマホを持たせているから不安だということもありますし、特に「母親」である方々の意識が高くなってきているように思います。

親向けの講座のようす

親向けの講座も行っている。講座終了後、質問したいと駆け寄る人も多いそうだ(写真提供=中谷奈央子さん)

 ここ数年のMeToo運動注釈やフラワーデモ注釈、芸能界での告発など、今まで「言ってはいけないこと」とされてきたことが表に出始めてきた。それに背中を押されるように、過去に妊娠したかもしれないと不安になったこと、彼氏に避妊してもらえなかったこと、痴漢に遭ったこと、自分が性的に傷ついてきたこと……それらは決して「しかたない」ことではない、子どもには絶対に経験してほしくない、そういった思いが強くなっているのかもしれないです。

 男の子の親御さんも性被害に遭うことを心配される方が増えてきましたし、「うちの子が加害者にならないためにはどうしたらいいか」という声が増えてきたことにも、時代の変化を感じています。

悩んだとき、子どもたちに思い出してほしい「3つのS

――ご著書の中で、「HAPPYに生きるための3つのS」のお話をされていますが、これまでのメッセージがぎゅっとまとまっています。

中谷 はい、「知る」「尊重する」「相談する」の「3つのS」は、本の中でも書いていますし、授業でもHAPPYに生きるヒントとして子どもたちに伝えています。

中谷さんの書籍

著書『10代の妊娠 友だちもネットも教えてくれない性と妊娠のリアル』は、体のしくみから妊娠、出産、中絶、育児のことまで、性にかかわる情報が網羅されている(写真=編集部)

 「知る」は、日本ではまだ性について学ぶ機会が少ない中で、ぜひ正しい知識を知ってほしいということ。それが自信やお守りになって、過去の傷や失敗が癒やされ、救われることもあります。

 「尊重する」は、相手だけじゃなく自分のことをもっと尊重していいよということ。友達や恋人、家族のために自分を犠牲にすることが美徳みたいなところがあるじゃないですか。でも、嫌なことやめてほしいこと、自分がしたいことをちゃんと大事にしてほしいし、相手の「NO」も受け止めてあげようという話をしています。

 「相談する」は、もっと遠慮なく大人を頼ってほしいということ。これまでいろんな子たちの相談を聞く中で気づいたのが、心配や迷惑をかけたらいけないという意識が強い子が多いなと。「こんなことも知らなくて申し訳ないんですけど」とか「こんなこと言ってすみません」とか、そんなこと言わなくていいから、雑談みたいに「今日、こんなことが嫌だった」「あーどうしよう」って気軽にいろんなことを話してほしいなと思います。

 いつ妊娠するかもしれない、暴力を受けるかもしれない。どんなこともだれにでも「起こりうる」し、傷つけられていい人なんて一人もいない。あなたは絶対に悪くない。大人はそうやって、「たとえあなたに何があっても、どんな失敗をしたとしても、力になるよ」というスタンスでどんと構えていてあげたいですね。

性教育授業の資料

暴力から自分を守るためのキーワード「NO、GO、TELL」。殴る蹴るの暴力だけではなく、性暴力や言葉の暴力も許されない(写真=編集部)

――授業を通して、子どもたちに変化が感じられることはありますか。

中谷 例えば授業で、「体や心の成長は人それぞれ。いいな、嫌だなと感じることも人それぞれ。それを尊重しよう」という話をしたりするんですが、授業のあと、「悩んでいるのは自分だけじゃないと知って安心した」という感想をたくさんもらいます。心のこと体のこと、正しい情報がわからないから悩んで、だれにも相談できない子がすごく多いということですね。

 自身のセクシュアリティについて打ち明けてくれる子もいます。授業でそういった話に触れていなくても、おそらく私がそれを聞いても特に驚かずに、「そうか~」と受け止めるだろうと思ってくれたのかなと。学校では「男女交際」と言いがちですが、もし自分がセクシュアリティに悩んでいたら、そんな言葉を使う大人には何も話せないなと思います。今は多様な性について、子どもたちの方が大人よりずっとすんなり受け止めているように感じます。

 ほかにも、友達や恋人と性に関する話ができるようになったとか、学校の先生からも、今まで話してくれなかったことを生徒が話してくれるようになったとか、不思議なことに性以外の相談も増えたなんて話も届きます。「否定されない」「自分だけじゃない」と思えたことで、自分のことを話しやすくなるんだと思いますね。

学校内の子どもたち

子どもたちは思った以上に、「こんなことだれかに話せない」「自分だけかもしれない」という思いを抱えている(写真=PIXTA)

性教育はいつからだって遅くない。気楽に、いっしょに

――「3つのS」の「知る」を家庭の中で育んでいくには、どうしたらいいのでしょうか。今まさに悩んでいる親御さんも多いのではないかと思います。

中谷 保護者向けの性教育講座をやると、お子さんの年代にかかわらず、どの親御さんからも必ず聞かれるのが「今まで何もしてこなかった。いつ、どうやって、どのタイミングで性教育を始めたらいいのか」ということです。私は、「いつだって、チャンスは何回でもありますよ」と答えています。

 まず、もっと気楽に考えてほしくて、いつであろうと手遅れだと思ってほしくないんです。私は一度きり会うだけの外部講師ですが、親と子というのはこれからもずっと続いていくもの。今までやってこなかったと思ったらこれからやればいいし、この前うまくいかなかったと思ったら、そのあと何度でも挽回できます。改まって今日は性の話をします、ということではなく、日常の中でさりげなくできることってたくさんあると思うんです。

 私には中1の娘と小4の息子がいますが、娘が赤ちゃんのときは性教育をあまり意識していなくて。息子が生まれて、例えばオムツを替えるときに「大事なとこ触るよ、きれいにしようね」みたいに、プライベートゾーンを意識した声かけをするようにしました。

性教育授業の資料

水着や下着で隠れる部分と口を「プライベートゾーン」と呼び、一人ひとりの大切な場所だと伝える(写真=編集部)

 あとはテレビを見ながら、男だから女だからみたいな話とか、トイレやお風呂で起こるドッキリとか、アニメでシャワー中の女の子をうっかりのぞいちゃうシーンとか、そういうときに「これって本当にやられたらどう? 実際にされたら嫌だよね~」と話してみたりとか。

 そういうのでいいと思うんですよね。ニュース番組もいいですね。性犯罪のニュースもたくさん流れてきますから、子どもの理解度を探りながら解説してみるとか。

 小さいうちなら、いっしょにお風呂に入っているときもチャンスです。何で大人と子どもは体が違うの?とか、何で男の人と女の人はおしっこの仕方が違うの?とか。子どもは自分から問いかけてくれることも多いですよね。

 教えるという立場じゃなくていいんです。聞かれた質問を子どもと考えてみる、わからなかったら後でいっしょに本を見てみる、そんなふうにいっしょに進んでいけたら。

中谷奈央子さん

学ぶことで、大人も「悩んでいるのは私だけじゃない」「私にも権利があるんだ」と安心してほしい、と中谷さん(写真=編集部)

――大人もいっしょに学び、考えていけばいい。

中谷 はい、何歳からでも遅くないので、今まで全然学んでこなかったなとか、何も教えられてないなって思っていても、この記事を目にしていただいている時点で始まっています。

 私も「子どもたちのために」と言いながら社会に向けて性教育をしていますが、昔は気づいていなかったような学びを得て、自分も救われているというか、楽になったな、変われたなっていうことがたくさんあります。難しく考えずに、子どもといっしょに考えていくことで、大人にとっても自分のお守りになり、人生の選択肢も増えていくはずです。

脚注

  1. 社会的・文化的性差別、性的偏見。男女の役割について、固定された思い込みや偏見を無意識に持つこと。例えば、「男はたくましく」「女はおしとやかに」といった個人の性格や気質、「男の子なら青」「女の子ならピンク」といった外見的イメージの決めつけなどを指す。

  2. 全国で唯一、18歳未満への避妊具販売を努力規定として禁じた事例。長崎県の少年保護育成条例が1978年に改正される際に盛り込まれ、第9条第2項目に「少年への避妊用具の販売等を制限する」「避妊用品を販売することを業とする者は、避妊用品を少年に販売し、また贈与しないよう努めるものとする」と、定められていた。2000年代に日本産婦人科医会長崎県支部などの医療関係団体から3度にわたって規制撤廃を求める要望が出され、2011年に撤廃された。

  3. 国連による国際セクシュアリティ教育ガイダンス(International Technical Guidance on Sexuality Education)。国際的な性教育の指針となっている。https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000260770

  4. 参考:「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)とは」(公益財団法人ジョイセフ)https://www.joicfp.or.jp/jpn/know/advocacy/rh/

  5. 2017年、アメリカで映画プロデューサーがセクハラで訴えられたのを機に、性被害の告発が相次いだ。「#MeToo」運動として世界的に広がりを見せ、沈黙を強いられてきた被害者たちが声を上げるきっかけとなった。

  6. 2019年4月11日に始まり、以来毎月11日に行われている性暴力への抗議を表明する社会運動。花を身に着け、「#MeToo」「#WithYou」を掲げて全国各地でデモを行っている。

取材・文=編集部 写真=編集部 構成=編集部