1杯分を1玉に。お湯で溶かして手軽にみそ汁を
――今日は、藤本さんお手製の「みそまる」をご用意いただきました。具は何が入っているんですか?
藤本智子(以下、藤本) 今回は身近な具材で、乾燥小松菜、ミニ高野豆腐、切り干し大根をみそまるにしてみました。おだしは粉末状にした「いりこ」で。上には花麩を飾っています。
――見た目もかわいいです……! ここからどんな風にみそ汁になるんでしょう。
藤本 本当に、簡単ですよ。お椀にポンと入れて、お湯を注いで……。お箸で混ぜて溶かしたら完成です。どうぞ、味見してみてください。
――おいしい! だしもしっかり効いているし、切り干し大根の甘みもある。そして何より、みその味や香りが楽しめますね。
藤本 ありがとうございます。近年、手軽なみそ汁というとフリーズドライのものが増えていて、それはそれで便利なので良いことですが、私はやはり生みそで作ることにこだわりたくて。
通常、お鍋でみそ汁を作る際にも、「煮えばな」といって沸騰する直前にみそを入れますよね。みそまるも、生みそにお湯を注ぐので、みそ本来の香りが生きるんです。
だしも、こんぶやいりこ、かつお節などを粉にしてそのまま入れるから、栄養たっぷり。インスタントみたいだけれど、添加物に頼らないし、食材の産地から自分で選べるので安心です。
――まとめて作って作り置きが可能、というのも魅力です。
藤本 500gのみそでおよそ30個のみそまるが作れます。水分の少ない具材なら、冷凍で1ヶ月ぐらいは日もちもOK。冷凍してもカチカチには固まらないので、出してすぐにみそ汁ができますよ。
みそまるをきっかけに、広がった食への関心
――「みそまる」というネーミングは、藤本さんご自身によるものだそうですね。どのようにして、この「みそまる」にたどりついたのでしょう。
藤本 ベースとなっているのは、戦国時代の携行食だった「みそ玉」です。すごくいいものだと思ったのですが、歴史を背負っているものだけに解釈もさまざまだし、もう少し私なりに自由さやポップさを足したいなと。そこで思いついたのが「みそまる」というネーミングでした。
「みそを通じて人や食卓がまあるくつながったら」という思いを込めて、「みそまる」。響きもかわいいでしょう?(笑)
――たしかに、「みそまる」という名前はすごく、親しみが湧きます。「ミソガール」として活動を始められたのは8年前からですね。みそと出会ったのは、どういうきっかけだったのでしょうか。
藤本 もともと、アパレル業界で仕事をしていたのですが、不規則な生活や食生活の乱れから、ひどい肌荒れに悩まされるようになったんです。そんなときたまたま、みその研究をされている大学の先生と出会い、「そんなにいいなら試しに食べてみよう」と、みそを積極的に食生活に取り入れ始めました。以来、すっかりハマってしまって。今では365日みそ汁を飲み、料理にもみそを使いまくる生活です。
――みそを食生活に取り入れることで、どのような変化がありましたか。
藤本 悩んでいた肌荒れはすっかり改善し、あんまり寝込まなくなりましたよ! でも何より、「みそまる」作りをきっかけに、広い意味での食に関心が向くようになったのは大きな変化でした。
「だしってどういう組み合わせがいいんだろう?」「せっかくなら食材の産地も知りたい!」って、どこまでもつながっていくんです。
マヨネーズやカレー、ケチャップも。発想は自由自在
――藤本さんの著書を拝見して、「みそまる」の具や味のバリエーションの幅広さに驚きました。ナッツやクコの実が入ったり、みそ汁ってこんなに自由でいいんだ、と気付かされる思いです。
藤本 みそって本当に、どんな食材とも親和性が高いんです。何を入れてもおいしくなっちゃう(笑)。エスニックにも合うし、ケチャップを入れて洋風、ごま油を入れて中華、カレーもいけます。
――ケチャップもいいんですか!?
藤本 ケチャップを入れると洋風スープのようになりますね。合わせる具は、チーズやほうれん草、マッシュルームもいいかな。
溶くものもお湯だけじゃなく、温めた豆乳や、野菜ジュースを入れても。鹿児島には、麦みそとかつお節を緑茶で溶いた「茶節」を飲む習慣もあるから、みそとお茶も合うんです。
――これまで抱いていた「みそ汁」のイメージではたどり着かない発想ですね。
藤本 確かに。みそまるにすることで、お鍋でみそ汁を作るときよりも不思議と発想が広がっていきます。
私自身もいろいろなみそのアレンジを楽しみますが、飲んでホッとするのはやはり、わかめや油揚げといった定番のもの。構えずに自由な気持ちでお気に入りの「マイみそまる」を見つけていただけたら、という気持ちで、こうしたバリエーションをご紹介しています。
みそ汁だけじゃない。日々の暮らしに、もっとみそを
――「ミソガール」として全国でみそまる作りのワークショップ等を開催している藤本さんですが、みなさんの反応はいかがですか?
藤本 とても楽しんでくださいますね。子どもたちも、みそを丸める作業にハマってくれます。火も使わないので、最年少は1歳のお子さんに参加してもらったこともあります。
ご高齢の女性にも好評で、「これを作っておけば、おじいさんに留守番してもらうときも気兼ねなくでかけられるわね」って(笑)。確かに、そういう方は多いかもしれませんよね。
――ワークショップでは、みその幅広い使い方についても提案されているとか。
藤本 はい、私も毎日の料理でみそをフル活用していますよ、とお伝えしています。
私、みその勉強はしていますが、料理のプロではないし、そんなに料理が得意なわけじゃないんです。それでも、みそを使えばおいしくなるので、もう、何でもみそです(笑)。
たとえば、味付けには塩を使わず、みそを入れています。みそなら、塩味はもちろん、みその風味が加わり、大豆由来の栄養もとれて……と、一石何鳥にもなるんですよね。
さらに、砂糖の代わりにもみそ、使います。
――砂糖の代わりにみそ、ですか!?
藤本 そう、麹の割合が多い「甘みそ」という部類の白みそや赤みそを砂糖代わりに使っています。甘みそは、使われている塩の量も一般的なみその半分程度。甘いものに塩気が入ると味が締まるので、かぼちゃの煮物の味付けはこの甘味噌を使うことが多いですね。
――なるほど、料理によってみその種類を使い分けているんですね。
藤本 みそは麹の種類や量の違いで味のバリエーションが幅広いんです。
――なんだか今日にでも、新しいみそを買いたくなりました(笑)。
藤本 魚や豚肉のみそ漬けに、箸休めになる野菜のみそ漬けもおすすめですね。
藤本 そんななかでも取り入れやすいのが、やっぱり「みそまる」のみそ汁だと思います。1パック使い切る自信がなくて……という方も、みそまるにしてしまえば一気に使い切れますから。
まずは身近な食材からでも、気軽に「みそまる」づくりを始めていただけたら、きっと楽しさを実感していただけるはず。大好きな具を1つでも入れたら、さらにテンションが上がりますよね。そうして「みそまる生活」が1ヶ月続いたら、きっと食生活にも変化を感じるはずです!