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トイレットペーパーは再生紙で作られている

(写真右=坂本博和)

自由研究におすすめ! 紙パックが製品に生まれ変わる“リサイクルのその先”を追う!

  • 暮らしと社会

今では身近な存在となった、再生紙で作られたノートやトイレットペーパーなどの紙製品。原料は紙パックや新聞などの古紙だが、回収されてからどのような工程で製品として生まれ変わるのか、知らない人も多いのではないだろうか。そこで今回は、パルシステムの「紙のリサイクル」をリサーチ。リサイクルの仕組みを知ると、近ごろよく耳にする「SDGs」が私たちの身近な問題だということが見えてきそうだ。ぜひ夏休みの自由研究の題材として、親子でいっしょに考えてみてほしい。

そもそもごみってどれくらいあるの?

 まずは、ごみがどのくらいの量が出されているのかを見ていこう。実は東京都だけでも1日当たり約1万1,000トンものごみ(※1)が出されている。また、令和2年度における全国のごみ排出量は、なんと4,167万トン(※2)。これでも、前年度に比べると数値は減少しているという。

※1…出典元:東京都環境局、東京都区市町村清掃事業年報 令和2年度実績、P122より算出

※2…出典元:一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和2年度)について(環境省、令和4年3月)

ごみを減らす取り組み「3R」とは?

 毎日大量のごみが出る一方で、「もったいない」の精神とともに、一人ひとりの取り組みによってごみを減らす「3R(スリーアール)」も広く浸透しつつある。「3R」とは、「Reduce(リデュース)=ごみを減らすこと」、「Reuse(リユース)=繰り返し使うこと」、「Recycle(リサイクル)=資源としてもう一度使うこと」といった環境保護のための3つの行動の頭文字「R」を取った言葉だ。

知ってる? 回収された古紙のゆくえ

 すぐにできる「3R活動」の一つ、「リサイクル」について調べていこう。ふだんのくらしで使っている紙製品で、古紙が使われているものを目にすることも多い。そのような製品が古紙からどのように生まれ変わるのかを詳しく知るため、パルシステム環境活動推進室の高橋拓海さんに、パルシステムで行っている「紙のリサイクル」の工程について話を聞いた。

パルシステム環境活動推進課の高橋拓海さん

取材陣を迎えるパルシステム環境活動推進課の高橋さん(写真=編集部。感染対策を徹底し、撮影時のみマスクを外して行いました)

どうやって集めているの?

 まずは、原料となる古紙の回収。パルシステムでは通い箱に入れておくだけで配達担当が回収してくれるが、一般的には、決められた曜日と時間に、資源ごみとして集積所に出すことが多い。

 「紙パックを出すときにぜひお願いしたいのが、きれいに洗って、開いて、乾かしてから出すことです。洗わないと悪臭の原因になり、ぬれたまま出すとカビてしまってリサイクルできなくなってしまいます。組合員のみなさんの多くに『洗って、開いて、乾かして』いただいているので助かっています。それから、注ぎ口やキャップなどは取ってくださいね!」

牛乳パックを洗っているところ

リサイクルに出す前には、きちんと洗う、開く、乾かすことが大事だ

 回収された紙パックは、他の回収物とともに、まずは配達トラックの中で種類ごとに分別され、パルシステムの配送センターへ集められる。

1日に集まる古紙の量は?

 パルシステムの配送センターで回収された古紙は、埼玉県にある杉戸リサイクルセンターに持ち込まれる。集まった紙パックやカタログなどが、ベーラー機で圧縮され、キューブ状の「ベール品」に加工されていく。

「ベール品」が積み重なっている

杉戸リサイクルセンターに積み上げられた「ベール品」

 「1ベールの重さは約1トン。杉戸リサイクルセンターでは1日に3ベールほど作って出荷するので、約3トンもの紙パック類が組合員のみなさんから回収されていることになります」

 ベール品を静岡県富士宮市にあるマスコー製紙の工場に出荷するまでが杉戸リサイクルセンターの役割だ。

どうやってきれいな紙になるの?

 マスコー製紙の工場に到着した紙パック類の「ベール品」は、まずは大きな洗濯機のような機械でドロドロに溶かされていく。回収物に含まれるインクやポリフィルムなども取り除かれ、真っ白な繊維に。きれいな紙の原料として生まれ変わる。そこに水を加えて引き伸ばして紙にして、製品のもとになる紙ジャンボロールから、それぞれの製品に加工される。

ベール品が溶かされている

ベール品が溶かされているようす

製品のもとになる紙ジャンボロール

溶かされたあと、製品のもととなる紙ジャンボロールになる

何ができ上がるの?

 これまで追ってきた工程を経て作られるのが、パルシステムの『り・さいくりんぐ』シリーズのトイレットペーパーとティシュペーパー。家庭から回収した古紙から作られた、再生紙100%の製品だ。

パルシステムPBの「り・さいくりんぐ」トイレットペーパー・ティシュシリーズ

『り・さいくりんぐ』トイレットペーパー・ティシュシリーズ

 「一般的にはまだ紙パックの回収率が低かった時代から研究を重ね、商品化を実現しました。『り・さいくりんぐ』トイレットペーパーには芯がなく、最後まで使い切れるからごみも出ないんですよ。そして、ティシュペーパーはパッケージにも再生紙を使用しています」

『地球の未来にまじめなボディソープ(紙パック)』のイメージ画像

原料となる古紙は「Rマーク」が目印。パルシステムでは、牛乳パックやヨーグルトのパックをはじめ『地球の未来にまじめなボディソープ(紙パック)』などにもついている

どれくらいの量ができ上がるの?

 「牛乳パック6パック分で、トイレットペーパーがおよそ1個できます。回収した中には紙パックなど、繊維の長いものがあります。それらを組み合わせることによって切れにくくなり、よい品質の製品ができるんです」

どうやって始まったの?

 パルシステムの牛乳パック回収運動は、1984年ごろ、山梨の組合員の声から始まった。高度成長の時代の中で、「牛乳パックが捨てられている。それを何とかできないか」、「ものの大切さを子どもたちにも伝えたい」というPTA活動をしていたお母さんたちの思いがきっかけだ。

 「洗って、開いて、乾かして出すことで資源になる、子どもへの教育にもなるということで、世の中にも浸透したのではないかなと思います」

パルシステム山梨の組合員が紙ごみを仕分けている

紙ごみを仕分けるパルシステム山梨の組合員

 自分たちが出した紙パック類が回収され、トイレットペーパーやティシュペーパーになってまた戻ってくる。決して難しいことではなく、子どもといっしょにできるような取り組みが、資源を無駄なく循環させていく。

ほかにも取り組んでいるところはある?

 パルシステムだけでなく、日本全国の各自治体、企業もリサイクルをはじめとする「3R」に取り組んでいます。今回、紙パックのリサイクルで紹介したマスコー製紙をはじめ、各企業、各自治体では工場やごみ処理場の見学を行っているので、ぜひ足を運んでみよう。

リサイクルは「SDGs」につながる

 SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2030年までの達成を目指して掲げられた、持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標のこと。17の大きな目標と、より具体的な169のターゲットから構成されている。最近では小中学校でも授業に取り入れられ、子どもたちのほうがよく知っている言葉かもしれない。

SDGs17の目標

2030年をゴールとして定められた17の目標

 12番目の目標「つくる責任、つかう責任」では、限りある資源を未来につなぐために企業と消費者が責任を持って生産し、消費することが求められている。ものやサービスを利用する私たち消費者ができることも多く、リサイクルもそのひとつ。日々の生活の中で取り組めることも多いので、「もっと知りたい!」と思ったら、さらに深く調べてみよう。子どもたちの「知りたい!」が、持続可能な社会の実現には不可欠だ。

取材・文=石本真樹 写真=編集部 構成=編集部